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オートファジーの謎 を紐解く その8

“オートファジーの謎”を紐解く
第一章 オートファジー、細胞内の大規模分解系
第二章 酵母でブレークしたオートファジー研究
第三章 自分を食べて飢餓に耐える
第四章 細胞の性質を変えるためのオートファジー
第五章 細胞内を浄化するオートファジー
第六章 相手を狙い撃ちする選択的オートファジー
第七章 免疫系でも活躍するオートファジー
第八章 オートファジーの研究最前線

第八章 オートファジーの研究最前線
オートファジーの主役であるオートファゴゾームがどのように作られるかがまだわかっていない。細胞が飢餓にさらされると細胞内に大量のファゴゾームが作られるがいったいどこから来るのであろう。飢餓なのに。これには小胞体(細胞内にある網目状の構造物)が関与していることが分かっている。隔離膜の内外に存在することが多い、オートファゴゾームを作り出すAtg因子の中でも特に初期に働くものは小胞体に局在することがわかっている。最新の研究ではゴルジ体からの小胞がなんらかの因子を供給している、ミトコンドリアも関与しているなど報告がある。
オートファジーの活性は通常は低いが飢餓によって高まる。これを制御しているのはアミノ酸とインスリンであることがわかっている。インスリンはアミノ酸からのタンパク質合成を促進して一方でタンパク質分解を抑える作用もある。オートファジーの抑制はこれを説明するひとつである。またオートファジーによってタンパク質からアミノ酸が産生されるのでネガティヴ・フィードバックがかかるのであろう。培養細胞の実験ではアミノ酸の方が強くオートファジーを抑制し、インスリンはその次であった。しかし、生体内のことはまだ、未知である。インスリンは変動幅が大きい。アミノ酸はそれほど変動幅は大きくはない。そもそも細胞がアミノ酸をどのように感じるかわかっていない。アミノ酸とインスリンによる細胞内伝達経路はTORという分子にたどり着く。TORはタンパク質キナーゼであり、いくつかのタンパク質をリン酸化する。TORはオートファジー因子であり、ULK1やAtg13などをリン酸化することでオートファジーを抑制している。飢餓時にはTORが抑制されるのでオートファジーが誘発される。このTORの経路が主たる調節経路であると考えられるがまだこれ以外の調節経路が次々と報告されている。
さてオートファジー病はあるのであろうか?2007年クローン病(炎症性腸疾患)の危険因子としてオートファジー関連遺伝子が見つかった。ATG16L1である。これはファゴゾームを作るのに必要な因子である。今の所、病因には多くの仮説があり、すぐにクローン病がオートファジー病とは言えず、研究がなされている。
第5章でオートファジーが抑制された状態が続くと腫瘍を発生しやすいと述べた。つまりオートファジーは腫瘍の自然発生を抑えているといえる。ところがひとたび腫瘍が発生してみるとオートファジーは一時的栄養供給システムとなっている可能性がある。現在アメリカではオートファジー阻害剤を癌治療として試みる治験がなされている。薬剤としてはクロロキン、ヒドロキシクロロキンである。クロロキンはマラリアの治療薬として有名であるが、リソソームの酸性化を阻害することによってリソソームでの分解を抑制するのである。今の所、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、多発性骨髄腫に試されている。
癌を相手の場合は抑制剤であるが、むしろ活性化した方がよい場合もある。格好の候補は細胞内に異常タンパク質が蓄積する神経変性疾患である。ポリグルタミン病という神経疾患がある。グルタミンが異常に連続することによって、ハンチントン病が発生するのである。グルタミンが40個以上連続するようになるとあるたんぱく質(ハンチンチンタンパク質)が凝集しやすくなり神経細胞が変性する。したがってこのたんぱく質を取り除けば発症を遅らせることができる。ショウジョウバエ、マウスの実験ではオートファジーを活性化させるのにはラパマイシン誘導体を使う。しかしタンパク質合成を阻害するなどの副作用があり、ヒトに使うのは難しいかもしれない。
オートファジーと抗加齢の関係であるが、もともと飢餓状態でオートファジーが活性化される。もしかしたらこれにより細胞内がきれいになり長寿をもたらすかもしれない。基礎研究は多数報告がある。大きな注目を集めているのがカロリー制限である。これは摂取カロリーを60%にするというものである。この程度の弱い飢餓でもオートファジーが誘発されることが線虫、マウスの実験からわかっている。インスリンシグナルに異常のある線虫は長寿となるが同時にオートファジー遺伝子に異常を持つと長寿効果が消されてしまう。またカロリー制限の長寿効果にオートファジー遺伝子が必要であるとする報告がある。これらに関してはまだまだ検討が必要である。
今後の課題を述べよう。動物を使った実験段階でヒトに関しては明らかなことがわかっていない。なぜならオートファジーを簡単に調べる方法がない、オートファジーには日内変動がある、簡便で客観的な測定方法がないからである。
研究にはしばしば偶然が訪れ、それがブレークスルーとなることがある。他の病気の研究からオートファジーとの関係が明らかになる日もくるであろう。ただそれを待つだけではなく、しっかりとした基礎研究をおこなうことで土台を築いておくことが将来の応用を可能にすると信じている。
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